いまや世界でも指折りの産業国となった日本ですが、かつて高度経済成長を遂げた時代には、水俣病やイタイイタイ病などを代表とする、工場からの排水や排ガスなどを原因とした公害が大きな社会問題となり、私たちの生活を脅かしていました。この過ちを繰り返さないために、1970年には公害対策法が制定され、翌年の1971年には特定工場における公害防止組織の整備に関する法律の制定と共に公害防止管理者という資格が生まれました。
どんな資格?その職務内容は?
法律により公害防止組織の設置を義務付けられた特定工場では、大気汚染、水質汚濁などの公害の防止のために、工場の運転、維持、燃料や原料などに関わる測定や検査を行う、公害防止管理者を選任しなければなりません。
公害防止管理者になるには資格を取得する必要があり、工場では公害が発生する可能性のある施設の区分ごとに公害防止管理者を選任しなければなりません。また、一口に公害防止管理者と言っても、大気関係第一種から第四種まで、水質関係第一種から第四種まで、ダイオキシン類関係、騒音・振動関係、一般粉じん関係、特定粉じん関係、公害防止主任管理者の13区分に分けられており、施設の種類や職務によって必要な資格区分が異なります。
資格を取得するには?
公害防止管理者になるには、毎年10月に行われる「公害防止管理者等国家試験」に合格するか、「資格認定講習」を受講する二つの方法があり、区分ごとにそれぞれ試験または講習科目が異なります。
試験の場合、科目数も区分によって異なりますが、全ての科目で合格点(正解率60%以上)を取らなくてはなりません。しかし、全ての科目を一度に受験、合格する必要はなく、3年以内に全ての科目の試験に合格すれば良いという科目合格制度が導入されています。全ての科目の試験をパスすると区分合格となり公害防止管理者の資格を有することができます。
また、試験は年齢、学歴、職務経験などの受験資格の規定が無いため、誰でも受験することができます。合格率は区分によって異なり10〜40%ほどで、平均すると20%位の合格率となり、毎年5000人以上が合格しています。一方、資格認定講習を受講して資格を得るためには、技術士、計量士、衛生工学衛生管理者などの資格を有しているなどの条件があります。詳しくは、試験や講習を実施している「社団法人産業環境管理協会」のホームページで確認してください。
就職先そして年収は?
公害防止管理者の就職先としては、主に化学工場などが挙げられます。また、製造業や電気、ガス、熱供給業の特定工場では、公害防止組織の一員として公害防止管理者の有資格者を選任しなくてはなりません。そのため、会社側から補助金を出して社員に資格を取得させる場合もあるので、資格を持っていれば就職や転職に有利になるでしょう。
また、自治体によっては、条例で公害の原因となる恐れのある施設に公害防止管理者の選任を定めているところもあるため、さらに就職先は拡大されます。しかし、有資格者の年収に関しては、各会社の基準によるところが大きく、400万から700万円とかなり幅があるのが現実です。そういう意味では、直接年収増加に繋がりにくい資格とも言えますが、公害防止管理者を資格手当の対象としている会社も多く、また資格を持っていることで責任者に抜擢されるなどの可能性もあるため、そこから収入増加に繋がる可能性もあります。
試験合格のための勉強方法は?
近年、不況の影響などから資格試験の受験者が増加している傾向があり、それに伴って、公害防止管理者の試験合格率が低くなっています。
しかし、地道に勉強することで十分に突破可能な試験で、国家試験としては中程度のレベルと言えるでしょう。勉強方法としては、試験を行っている産業環境管理協会でも有料の講習会を行っているほか、通信教育または書店で参考書を入手して独学という手段もあります。
また、インターネット上でも過去問が無料で公開されているので参考にしてください。試験の設問は暗記問題と計算問題が多いため、できるだけ多くの演習をこなすことが合格に繋がるでしょう。時間はかかりますが、コツコツと毎日時間を決めて勉強をすることをおすすめします。
公害防止管理者は、法律や条例で選任が義務付けられている工場も多いことから需要が大きく、試験の合格率の低さから希少価値もあるため、資格を取得するメリットは大きいと言えるでしょう。積極的に資格を取得し、就職やスキルアップに役立ててください。
